親からの住宅資金援助を受ける際、贈与税に関する手続きとは?

お金

住宅の購入にあたり、父母や祖父母から資金援助を受ける人も多いはず。
父母や祖父母などの直系尊属から資金の援助を受ける場合、一定金額までの贈与税が非課税になる制度があるのはご存知でしょうか。
基本的は500万円までは非課税、性能の高い住宅は1,000万円まで非課税になるため、資金援助を受けるならチェックしておきたい制度です。今回は、この非課税制度について、2023年現在の概要と利用上の注意点、手続き方法などについて解説します。


「住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置」制度の概要

直系尊属(父母や祖父母)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定の金額までの贈与税が非課税になる制度を「住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置」と言います。

つまり、「子供や孫が住宅を購入するための資金援助であれば、一定額まで贈与しても贈与税を課しませんよ」という特例です。

注意点は、あくまで住宅を新たに取得するための資金援助でなければならないこと。既存の住宅ローンの返済のための資金援助はこの特例の対象となりません。

制度を受けるための要件は3つ


1. 贈与を受けるのは子供か孫であること (妻の両親から夫が贈与を受ける場合は、利用不可)

2. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を新築や取得していること

3. 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は遅滞なく居住することが見込まれること等


非課税になる金額は

贈与税の非課税限度額は省エネ等住宅の場合1,000万円、それ以外の住宅の場合は500万円です。(適用期限は2023年12月31日まで)

省エネ等住宅とは、以下の3つの基準のいずれかに適合する住宅用の家屋であり、さらに住宅性能証明書など一定の書類を贈与税の申告書に添付することによって証明されるものをいいます。


基準1:断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上

基準2:耐震等級(構造駆体の倒壊等防止)2以上または免震建築物であること

基準3:高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること


つまり、非課税金額枠を拡大するためには、耐震や省エネまたはバリアフリーの項目での基準をどれか1つでもクリアしている住宅であることが重要。

これから自分が取得する住宅の性能をあらかじめ確認しておきましょう。

すでに非課税の特例の適用を受けている場合は、非課税金額枠から適用金額が差し引かれるのでご注意を。

制度を利用する住宅の条件

対象となる住宅の条件をざっくりとまとめると、日本国内に存在すること、居住用かつ床面積がファミリータイプのものでなければなりません。さらに新築もしくは取得、または増改築等によって要件が異なるので注意が必要です。

(新築もしくは取得の場合)
新築もしくは取得した住宅用の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの場合は専用部分の床面積)が40平方メートル以上240平方メートル以下、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が居住用でなければなりません。

また、取得した住宅については、以下のいずれかに該当する必要があります。


・建築後使用されたことがない
・建設後使用されたことがある家屋で、1982年1月1日以降に建築されたもの
・建設後使用されたことがある家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであり、それが一定の書類によって証明されたものであること。


(増改築等の場合)


・増改築後の家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの場合は専用部分の床面積)が40平方メートル以上240平方メートル以下、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が居住用であること。
・増改築の工事が自己所有かつ居住している家屋に対して行われたもので、一定の工事に該当することについて、「確認済証」や「検査済証」など書類によって証明されたものであること。
・増改築等にかかった費用が100万円以上であること。また、増改築等の工事に要した費用の額の2分の1以上が、居住用の部分の工事に要したものであること。


制度を利用する人の条件

贈与を受ける者は、以下の全ての要件を満たさなければなりません。


1.贈与を受けたときに、贈与者の直系卑属であること
2.贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること。ただし、2022年3月31日以前の贈与については20歳以上であること。
3.贈与を受けた年の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下(対象となる家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は1,000万円以下)であること。
4.2009年から2022年分までの贈与税の申告で、住宅取得等資金の非課税の適用を受けたことがないこと。
5.対象となる住宅が自分の配偶者や親族などから取得したものではないこと。またはこれらの方との請負契約等により新築または増改築等をしたものではないこと。
6.贈与を受けた年の翌年の3月15日までに住宅取得等資金の全額をあてて、家屋の新築等を行うこと。
7.贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること。
8.贈与を受けた年の翌年の12月31日までにその家屋に居住していること。


参考:国税庁HP:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

そもそも贈与税とは

贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です。ただし、法人から贈与により財産を取得したときは、贈与税ではなく所得税がかかります。

課税方法は「暦年課税」と「相続時精算課税」

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、どちらかを選択できます。ただし、一度相続時精算課税を選択したら、暦年課税に戻すことはできず、2つの制度の併用はできません。

暦年課税とは

暦年課税とは、その年の1月1日から12月31日までにもらった財産の額に対して贈与税がかかる仕組みで、110万円の基礎控除が設けられています。つまり、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要な制度です。

相続時精算課税とは

相続時精算課税とは、2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができ、贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税する制度です。

ケース① 母親から2,000万円を贈与され、数年後母親が他界。相続された資産が5,000万円の場合

2,000万円贈与された際に相続時精算課税制度を利用すれば、この時点では贈与税は発生しませんが、母親が他界した際の相続資産と合わせた計7,000万円に対して相続税が計算されるということになります。

ケース② 母親から3,000万円を贈与され、数年後母親が他界。相続された資産が2,000万円の場合

3,000万円贈与された際に、相続時精算課税制度を利用すれば、2,500万円までの贈与税は非課税、残り500万円に贈与税が発生します。この際に支払った贈与税100万円(500万円に対しての贈与税率は20%)が、母親が他界した際の相続資産2,000万円から控除されます。

つまり、2,500万円までの贈与に対しては非課税ですが、それ以上の金額の場合は、贈与を受けた時に贈与税を支払うか、先送りにするかを判断する制度です。

この制度は、1人の贈与者からの贈与額の合計が2,500万円になるまでは、何回贈与を受けても非課税となります。また、贈与者ごとに利用も可能。例えば両親からそれぞれ贈与を受ければ、最大5,000万円まで贈与税が発生しないことになります。

なお、相続時精算課税の制度を利用する受贈者は、贈与税の申告期間内に、贈与税の申告と一緒に「相続時精算課税選択届出書」および一定の書類を贈与税の申告書に添付して所轄税務署へ提出しなければなりません。

住宅取得等資金の贈与の非課税措置を活用する注意点とは

本制度を利用する上での注意点を2つ解説します。

贈与税が0円でも必ず申告が必要

非課税措置を活用する場合、適用によって贈与税額が0円となった場合でも、申告が必要です。
贈与税の申告期限(贈与を受けた翌年の2月1日~3月15日)内に必ず申告するようにしてください。

万が一、税務署に申告書を提出していないことが分かった場合には、住宅取得等資金贈与の非課税制度が使えないだけでなく、贈与を受けた金額から110万円(贈与税の基礎控除額)を引いた金額に通常の贈与税率をかけて計算した贈与税、無申告加算税と延滞税というペナルティの税金も納める必要があります。

例えば500万円の贈与を受けた際に、住宅取得等資金の贈与の非課税措置を利用しない場合の贈与額は48.5万円になっていしまいます。具体的な計算方法は以下の通りです。

(例) 贈与財産の価額が500万円の場合(「特例税率」を使用します。)
基礎控除後の課税価格 500万円 - 110万円 = 390万円
贈与税額の計算 390万円 × 15% - 10万円 = 48.5万円

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

小規模宅地等の特例が使えない

「小規模宅地等の特例」とは、相続の際に土地の相続税評価額が80%引き下げられる制度のこと。

つまり「亡くなった人の自宅用の土地については、8割引きの金額で相続しても良い」といった特例です。評価額の1億円の土地が2,000万円になるのであれば、相続税も大幅に変わります。 

住宅取得等資金の贈与の非課税措置を利用する際は、将来相続が発生するかどうかも確認しておいた方が良いでしょう。

非課税の特例を受けるために必要な手続きとは

住宅取得等資金の贈与の非課税措置を受けるためには、贈与税の申告が必要です。これは、特例の適用によって贈与税額が0円になる場合でも行わなければなりません。

具体的には、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に必要な書類を添付して、受贈者の住所地を管轄する税務署に提出します。

申告期限は贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までなので、忘れないようにしましょう。

申告の際に必要な書類については、以下のとおりです。

・戸籍謄本
・贈与を受けた年分の源泉徴収票など
・新築、取得、増改築等を行った家屋や敷地の登記事項証明書
・新築、取得した際の売買契約書や建築請負契約書の写し

また、省エネ等住宅の場合、住宅性能証明書や建設住宅性能評価書の写し、増改築等を行った場合、増改築等工事証明書なども添付する必要があります。

2024年から制度改正で贈与税や相続税のさらなる節税が可能に

2022年12月に公表された「令和5年度税制改正大綱」によると、相続税と贈与税の一本化が盛り込まれるなど、今後大幅な変更が予定されています。

今回の令和5年度税制改正大綱の内容が正式に決定となった場合、変更点は以下のようになります。

① 相続時精算課税制度に基礎控除が追加・年間110万円以下の贈与は申告不要に

② 暦年課税制度の相続財産加算は死亡前3年間→7年間に

③ 教育資金、結婚・子育て資金贈与の非課税措置も延長

本記事に関するのは①と②なので、以下で詳しく解説すると

①に関して、これまで相続時精算課税制度は暦年贈与と違い110万円の基礎控除はなかったものの、新たに110万円の基礎控除が設けられ110万円以下の贈与は贈与税申告が不要になりました
相続税の計算においても110万円以下の贈与は相続財産に加算する必要はありません。

②に関して、これまで贈与者の死亡前3年間に行われた贈与財産額は相続財産額に合算され、相続税の課税対象とされてきました。この対象期間が死亡前7年間に改められたことにより、早いうちから資産移動しておく方が節税になるでしょう。

まとめ

本記事では、親からの住宅資金援助を受ける際の贈与税に関する非課税制度について解説しました。
ただし贈与税には、さまざまな非課税制度が設けられているため、さまざまな非課税制度を組み合わせて活用することで最終的な節税効果が高くなることが期待できます。

ただし、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置を利用する際には、贈与税が0円でも申告が必要であり、小規模宅地等の特例と併用できないなどのデメリットがあることも知っておかなければなりません。

今後も課税関連の制度については逐次改正されていくことが予想されるので、制度変更の動向にアンテナを張っておきましょう。
具体的にどの方法が最も節税になるのか、まずは贈与する方が税理士に相談することをおすすめします。

執筆者:株式会社コプラス

渋谷区にあるまちづくりが得意な不動産コンサルティング会社。コーポラティブハウスの企画をメイン業務としながら、家づくりに関する知識をお届けするデジタルコラム・「CO+コラム」も運営しています。

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