RC造の耐用年数と寿命の違いは管理状態の良い中古マンションを見極めるポイント

不動産専門知識

マイホーム取得の選択肢として、中古マンションを検討するにあたり、まず見るのは立地や広さ、価格や間取りでしょう。その次に気になるのが、「あと何年住めるのか」ということ。そこで本記事は、マイホームとして中古マンションを検討する方向けに、「何年住めるのか」を判断する基準となる耐用年数や寿命の考え方を解説。また管理状態の良い中古マンションを見極めるポイントもお伝えしますので、気になる目次からご確認ください。


耐用年数と寿命の違い

まず初めに耐用年数の正しい意味とマンションの寿命に関わる要素を理解しておきましょう。

耐用年数とは固定資産を使用できる期間のこと

建物は建てられてから年数が経過するにしたがって価値が下がっていくもの。
そのため、不動産の売買においても、現時点からその固定資産(建物)をどのくらいの期間使用できるのかを判断するために「耐用年数」という指標が用いられます。

では耐用年数は何で決まるのでしょうか。耐用年数を左右する要素は以下の3つです。

1.物理的耐用年数

物理的耐用年数は、建物が使用できなくなるまでの年数を示す指標であり、もっとも「寿命」に近い指標。しかし、厳密には建物の立地や管理状態に影響される部分が大きく、物理的耐用年数を用いても正確な寿命を知ることはできません。

木造寺院や歴史的建造物が残存していることからもわかるように、建物の環境要因によって物理的耐用年数をはるかに超えている事例も多々存在します。

2.経済的耐用年数

経済的耐用年数とは、建物の経済的な価値が失われるまでの期間を示す指標。
材質の劣化や修繕の有無、市場から見た価値の低下などを通して、対象の建物にどのくらいの価値が残っているのかを総合的に判断します。

経済的耐用年数が長いほど、資産としての価値が増加するため、主に投資の場では重要な判断基準となります。

3.機能的耐用年数

機能的耐用年数とは、技術の発展や環境の変化、社会的ニーズにより、当初の建物の目的が陳腐化するまでの年数を示すものです。

ただし、機能的耐用年数は、さまざまな要因が影響するため、判断が難しいのが現状。
そこで、不動産の価値を画一的に算出できるという公平性・透明性が求められる税務会計上においては、不動産の構造、種類、用途などによって一律に耐用年数である「法定耐用年数」が用いられています。

建物の法定耐用年数は構造と用途によって決められています。

建物の構造 耐用年数(住宅用)
木骨モルタル造 20年
木造・合成樹脂造 22年
金属造 34年
れんが造・石造・ブロック造 38年
鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造 47年

参考:東京都主税局HP 別表1 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表

マンションに多く使用されている鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年。

一般的なマンションでは10~15年に一度大規模修繕が予定されており、具体的には外壁補修工事、屋上防水工事、鉄部塗装工事、給水管取り替え、排水管取り替えなどを行います。こうしたメンテナンスを定期的に施すことにより、法定耐用年数を超えたマンションも多く存在します。

マンションの寿命とは

国土交通省によれば、鉄筋コンクリート造のマンションの寿命は平均で68年、物理的な寿命としては最長で100年以上といった調査結果がまとめられています。

マンションの寿命は何できまるのか、寿命を延ばすためにはどうすべきか、解説します。

マンションの寿命を決める4つの要素

旧耐震か新耐震か

地震大国・日本では、さまざまな震災を経験するなかで耐震基準が厳格化されてきました。
特に1981年に耐震基準が大幅に見直され、震度5程度の地震で崩壊しないといった従来の基準から、震度7でも倒壊を免れる新耐震基準が用いられるようになり、マンションの耐震性は大幅に向上しました。

そこで制度改正前の1981(昭和56)年6月1日以前の建築確認において建てられている建物を「旧耐震」、それ以降の建物を「新耐震」として分けるようになりました。

「旧耐震」の場合、マンションの取引価格が相場より安くなり、銀行によっては住宅ローンの融資対象にならない場合もあります。

「住宅性能評価証明書」があるかどうか

住宅の性能を証明するエビデンスとして「住宅性能評価」があります。これは、平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)」に基づいて、同年 10 月に本格的に運用開始された制度により、発行される建物の性能を数端的に確かめられる証明書です。

中でも「劣化対策等級」は住宅性能表示制度による建物の「評価項目」であり、建物の構造躯体の部分に用いられる木材のシロアリ対策や鉄筋の錆び対策など、住宅を長持ちさせるための対策の程度を、3段階の等級で評価しています。

等級3

通常想定される自然条件および維持管理条件の下で、
3世代(75年~90年程度)まで長持ちするように対策が講じられている場合

等級2 通常想定される自然条件および維持管理条件の下で、
2世代(50年~60年程度)まで長持ちするように対策が講じられている場合
等級1

建築基準法が定める対策が講じられている場合

中古マンションの取引現場においては、住宅性能証明書を取得しているマンションの方が少ないのが現状です。なぜなら、住宅性評価証明書の取得が義務ではないこと、制度開始前に建てられたマンションが一定数存在すること、令和3年時点において新築マンションの供給戸数のうち、住宅性能証明書を取得している割合は、28.2%にとどまっているからです。

【参考】国土交通省:住宅性能評価書(設計)を交付した住宅の割合は増加 ~令和3年度の住宅性能表示制度の実施状況について~

なお、住宅性能証明書の有無は不動産仲介会社を通じて管理会社に確認することができます。

メンテナンス状況はどうか

つぎに、マンションの寿命を決める大きな要素はメンテナンス状況です。
適切な修繕計画が立てられているか、定期的なメンテナンスが行われているかによって、建物の劣化速度には大きな違いが生まれます。
中古マンションの場合は、仲介を依頼する不動産会社を通じて修繕履歴や修繕積立費の納入状況、長期修繕計画などの資料を入手することができるので、こちらも確認しておきましょう。

部屋やマンション自体の環境要因はどうか

マンションの寿命は、外的な要因によっても変化します。たとえば、日当たりに恵まれない立地や部屋条件ではカビなどが発生しやすく、海に近い立地では塩害で劣化が進みやすくなってしまうなどの問題が考えられます。
また、長く住むことを考えると、地震などの災害も気になるもの。気になるマンションを見つけたら地盤やハザードマップも確認してみましょう。

良い管理状態のマンションを見極めるには

修繕積立金が適正かチェックする

マンションのメンテナンスにはまとまった資金が必要となるため、まずは修繕積立金の管理体制が重要なポイントです。
修繕積立金は金額が高ければ、毎月の費用負担が増えてしまう一方、金額が安すぎても将来的な修繕費用が不足することになります。

そのため、修繕積立金の相場を知っておくことが大切です。
2011年に国土交通省が発表したガイドラインは近年改定され、マンションの総階数、延べ床面積ごとに1平米あたりの平均値が以下のとおりになりました。

階数・建築延べ床面積 1カ月当たりの平均修繕積立金
20階未満 5,000㎡未満 335円/㎡・月
  5,000㎡以上~10,000㎡未満 252円/㎡・月
  10,000㎡以上~20,000㎡未満 271円/㎡・月
20階以上   338円/㎡・月

購入するマンションの条件と平均修繕積立金を照らし合わせながら、金額の妥当性を確かめておきましょう。

【参考】国土交通省:マンションの修繕積立金に関するガイドライン」/「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」新旧対照表

管理組合の質を確かめる

管理組合とは、分譲マンションの所有者全員で構成される管理団体。実際的な業務は管理会社が行うものの、管理の主体は管理組合にあるため、管理組合が適切に機能しているかどいうかが、メンテナンス状況を左右する要素のひとつとなるのです。

良い管理組合とは、住民間に「マンションを管理していこう」という意識があるので、管理会社が行う清掃や会計の状況などを適宜チェックし、問題があれば指摘するなどして改善を図っています。結果として住民同士の関係が良好であったり、マナーが良かったりといった特徴も見られます。

良い管理組合かどうかは、ゴミ置き場や駐輪場を確認してみましょう。指定日にゴミがまとめて出されているか、自転車が整然と駐輪されているかどうか、居住者専用の駐輪場シールが自転車に貼られているかどうか、等がチェックポイントです。

また、不動産仲介会社を通じて、管理会社に管理規約や管理組合議事録の開示を求めることもできます。管理規約や議事録を確認することで、話し合いがされている管理組合なのかどうか、書類の保管状況などもわかります。良い管理組合を見極める判断材料のひとつとなるでしょう。

ホームインスペクションを利用する

ホームインスペクションとは、建築士などの専門家によって、建物の構造上の劣化や不具合をチェックしてもらえるサービスのこと。表面的は分からない構造部分について専門家にチェックしてもらうことで、“見える化”することができます。費用、数万円程度。

不動産仲介会社が買主のためのサービスの一環として実施しているケースもあるので、気になる方は問い合わせてみてはいかがでしょうか。マンションの購入は一生に一度ともいえる大きな買い物となるため、安心を買うという意味で利用を検討してみるといいでしょう。

寿命を迎えたマンションはどうなる?

法定耐用年数も過ぎ、さらに長い時を経て、住めないほど劣化したマンションは、建て替えもしくは解体して更地にすることになります。

建て替えの場合、居住者が費用を出し合うことになりますが、築年数が古いマンションは住民も高齢化していることが多いため、費用を捻出することができず、建て替えはなかなか進んでいないのが現実です。劣化したまま放置されたマンションは耐震性の問題もあり、社会問題化しているのが現状。

マンションの寿命について考え始めたら、早めに行動することが大切です。

建て替えを希望するのであれば管理組合の一員として集会の開催を提案したりできますし、寿命がくる前に手放すのであれば売却活動をおこなう必要があります。
築30~50年のマンションを取得する場合は、建て替えの可能性もあるため、事前にイメージしておきましょう。

中古のコーポラティブハウスという選択肢も

コーポラティブハウスの事業企画を担当するコプラスでは、コーポラティブハウス売却や購入の際の媒介業務を担当しています。

コーポラティブハウスとは、入居希望者が集まって建設組合を結成し、新築のマンションを作っていく仕組みのこと。入居を決めてから1年半から2年ほど時間がかかりますが、その間に同じマンションに入居する者同士少しずつ顔見知りになっていったり、打ち合わせを重ねて部屋の内部を自由に設計したりしていきます。

こだわりの空間を時間をかけてつくる経験により、建物自体に対する入居者の関心が高まり、建物の管理に対する高い意識も醸成されます。結果的に「良い管理組合」になるケースが多く、中古マンション取得の選択肢として、コーポラティブハウスもおすすめです。希望の地域でコーポラティブハウスが売り出されているかどうか、チェックしてみてはいかがでしょうか。

執筆者:株式会社コプラス コーポラティブ事業部 大澤(宅地建物取引士)

渋谷区にあるまちづくりが得意な不動産コンサルティング会社でコーポラティブハウスの企画運営を担当しています。同時に家づくりに関する知識をお届けするデジタルコラム・「CO+コラム」も運営中。

◆コーポラティブハウス特設サイト https://cooperativehouse.jp/

◆お宅訪問インタビュー動画: https://cooperativehouse.jp/casestudy/

◆コプラスの仲介サイト: https://cooperativehouse.jp/agency/

 

この記事を書いた人

株式会社コプラス

Back to Top