住宅ローン出口戦略!完済後の手続きについて解説
住宅ローンを借入するまでは色々調べるものの、完済後までイメージできている人は少ないのではないでしょうか。住宅ローンを返済したら、抵当権の抹消や火災保険に関する手続きを進めなくてはいけません。本記事では、住宅ローン完済したらどのような手続きを進めるのか、詳しく解説します。
もくじ
住宅ローン完済までの道のり
毎月決まった返済額が口座より引き落とされる形で返済をしていく住宅ローン。完済の仕方は、返済を続けあらかじめ決めていた借入期間を迎えるか、借入残額が少なくなってきたときに、残額を一括返済するかのどちらかです。
ほとんどの人が繰り上げ返済を実行
住宅金融支援機構「2020年度 住宅ローン貸出動向調査」によると、2019年度の新規貸出の約定貸出期間は27.0年(単純平均)に対して、15年ほどで返済している人が多いようです。
出典:住宅金融支援機構「2021年度 民間住宅ローン貸出動向調査」
繰り上げ返済をする理由3つ
一般的に、住宅ローンは最長35年まで借りられるにもかかわらず、完済までの平均期間が20年に満たないのは、全額繰上げ返済(一括返済)しているからでしょう。全額繰上げ返済の主な理由は以下の3つです。
①金利の低い金融機関へ借り換えるための返済
②余裕資金による返済
③ライフステージの変化による住み替え返済
①から③を考えていたら繰り上げ返済するチャンスかもしれません。ただし現時点では、住宅ローン控除(住宅ローン残高に応じて所得税や住民税が控除される制度)が最長13年間受けられるため、繰り上げ返済をせずにローン残高を残しておいた方が、多くの控除を受けられます。実際は、繰り上げ返済時の金利によって得かどうか決まるため、気になる方は住宅ローンを借り入れている金融機関に資産・相談してみてもよいでしょう。
では、実際に住宅ローン完済の流れについて解説します。
住宅ローン完済の流れ
住宅ローンの完済を考える際の大まかな3つの流れについて解説します。住宅ローンを借り入れている金融機関、司法書士、加入している火災保険会社に対して、連絡や依頼が必要になります。
繰り上げ返済の手続き
繰り上げ返済を希望する場合は、金融機関に連絡すればOK。住宅ローンを約定返済(当初の契約通りの返済)ではなく、繰り上げ返済で完済(一括返済)する場合は、銀行との手続きが必要となります。この場合、各金融期間ごとに所定の手続きが異なる点、手数料が発生する点、繰り上げ返済を実行するには約1ヶ月かかる点はあらかじめ認識しておきましょう。
手数料は、定額制と定率制の2つの方式があり、どちらを採用しているかは金融機関によって異なります。
たとえば、3万円+消費税といったように返済金額にかかわらず一律の手数料がかかるのが定額制で、たとえば返済金額の1%+消費税といったように一定の割合で手数料がかかるのが定率制です。
繰り上げ返済が完了したら、「完済証明書」などの抵当権抹消に必要な別書類を受け取っておきましょう。金融機関ごとに書類が異なるため、管轄法務局で完済証明書の代わりとして使えるか確認しておくことも大切です。
抵当権抹消手続き
完済日が決まったら、抵当権抹消手続きを進めましょう。抵当権とは、住宅ローンを借りる際に、購入する土地と建物に対して金融機関が設定する権利のこと。住宅ローンの返済が滞った場合、金融機関は対象物件を競売にかけてローン返済に充てることができます。
抵当権の抹消は自分でやるか、司法書士に依頼するか
抵当権の抹消手続きは、自分自身で手続きを進めるか、司法書士に依頼するかの2択です。自分で抵当権抹消手続きも可能ですが、手間がかかるため、司法書士に依頼する人がほとんどです。以下ではそれぞれの手続きの流れとメリット・デメリットについて解説します。
自分で進める場合、手間はかかるが、費用は安い
自分で進める場合は、必要な書類を集めて、抵当権を抹消したい不動産を管轄する法務局に提出すればOK。ただし、抵当権の設定された不動産を売却し、その代金で残債を一括返済するなどの場合は自分では抹消手続きを進めることができませんので、司法書士に依頼するようにしましょう。
かかる費用としては、土地・建物それぞれ1件・1筆ごと1,000円の登録免許税と、法務局への交通費もしくは郵送代(1000円~2000円)、登記事項証明書の取得費用など、合計約5千円程度です。
登記事項証明書は所轄の登記所窓口で請求すると600円、「オンライン請求・郵送受け取り」は500円(平日21時まで請求が可能)、「オンライン請求・最寄りの登記所での受け取り」を利用すると480円で受領可能です。
登記簿謄本の甲区には所有者である自身の情報が所有権として記載されており、乙区には抵当権や地上権など所有権以外に関する情報が記載されています。抵当権が抹消されると、乙区記載の情報に下線が記載され、抹消したことの証明になります。
司法書士に依頼する場合、楽だが、費用は高い
司法書士に依頼する場合は、登録免許税と合わせて報酬が必要です。報酬の相場は1万円~1万5千円前後。これは1つの抵当権に対しての費用なため、複数の金融機関から住宅ローンを借りている場合は、それぞれに抵当権がついているので、それぞれの抹消費用が発生します。この金額は、あくまで通常の抵当権抹消の場合であり、相続による不動産名義の変更などを組み合わせると金額は上がるのでご注意ください。
抵当権を抹消しないとどうなる?
抵当権が付いたままの物件は、売り出す際に買い手が付きづらい、相続の際に手間がかかる、等のデメリットがあります。住宅ローンの完済時と抵当権の抹消はセットと考えましょう。
火災保険に関する手続き
最後に、火災保険に関する手続きも確認しておきましょう。まれに住宅ローン借入時に、火災保険に質権が設定されていることがあります。火災保険の質権設定とは、もし万が一建物が火災で消滅した際、保険金が契約者ではなく金融機関に優先して支払われるようにしている権利のこと。
質権が設定されている場合は、住宅ローン完済時に金融機関から「保険証券」や「質権消滅承認請求書」が送られてくるので、加入している保険会社に連絡して、質権抹消手続きを進めましょう。金融機関から「質権消滅承認請求書」が送られてくるので、自身で保険会社へ連絡を入れて手続きを行い、完了です。なお、火災保険自体は、引き続き加入していることになるので、追加で保険料を支払うような必要はありません。
まとめ
住宅ローンを借り入れる際には金利や条件などの面でいろいろ検討を進めますが、完済時の出口戦略までイメージできている人は少ないのではないでしょうか。住宅ローン完済をしようと思ったら、まずは金融機関に連絡、つぎに抵当権の抹消手続き、最後に火災保険内容の確認が主な流れでした。住宅ローン完済時の流れを把握しておくことで、繰り上げ手数料も把握でき、トータルコストの判断に役立ちますね。これからも暮らしに役立つ知識を発信していきますので、こうご期待です。
執筆者:株式会社コプラス
渋谷区にあるまちづくりが得意な不動産コンサルティング会社。コーポラティブハウスの企画をメイン業務としながら、家づくりに関する知識をお届けするデジタルコラム・「CO+コラム」も運営しています。
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