購入前に知りたい、マンション管理のイロハ。コーポラティブハウスの管理は?
戸建てとマンションの違いのひとつに、毎月の管理費や修繕積立金を支払うか否か、が挙げられるでしょう。ただし、どちらも実は建物の管理を“自分”でしなければならないのも事実。では「マンションの管理」とは具体的に何をするのでしょうか。本記事では、マンション管理の基本的な考え方から、購入前にチェックすべき項目も解説。最後には、コーポラティブハウスの管理についてもお伝えします。マンションの購入を考えている人やコーポラティブハウスへの参加を検討している人にもおすすめの内容となっています。
もくじ
マンション管理の基本的な考え方とは
マンションの管理とは、住人が安全に気持ちよく暮らせるよう建物や設備を良好な状態に保ち、資産価値を維持するためのもの。例えば、日々の掃除が行き届いていること、ゴミ出しなどのルールが守られていること、エレベーターや駐車場などの設備点検がきちんとされていること、などが挙げられます。
マンション管理をしっかり行うことによって管理状態が長く続けば、法定耐用年数(詳しくはこちら)を超えても住み続けることができるだけではなく、将来の売却の際に購入者が検討する重要なポイントにもなります。
マンション管理の重要性を理解したところで、つぎにその管理を担う「管理組合」と「管理会社」について解説します。
管理会社と管理組合の違いや業務内容
マンション管理会社とは、管理組合から委託されたマンション管理の専門業者を指します。
マンション管理会社は、マンションを販売したディベロッパーの系列会社と管理業務を専門とする会社に大きく分けられ、前者が受託するケースが一般的です。
一方、管理組合とは、マンションの住環境や資産価値を守るために作られる組織のこと。
区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)ではマンションの管理体制の整備が義務づけられており、マンションの所有者になる場合は、「管理組合」と呼ばれる組織への加入が必須になります。
つまり、住民全員でマンションの維持管理に努めていく必要があるということ。
日常の業務は代表者の集まりである「理事会」が担い、定期的に開かれる理事会にて、役員同士がさまざまな課題を話し合いながらマンションの維持管理に関する意思決定を進めていきます。
本来はどの管理会社に委託するか、どこまでの業務を任せるか、それを決めるのも管理組合の権限です。一旦委託すると管理会社に任せっきりになりがちですが、管理会社が契約どおりにきちんと仕事をしているかチェックすることも管理組合の責任になります。
マンションの管理業務の内容とは
管理員の配置から事務管理まで業務内容は多岐にわたり、大きくは4つに分類されます。管理会社は管理組合からすべての業務、あるいは一部の業務を受託し、代行します。
(1)事務管理業務
管理組合の会計、出納、マンションの維持または修繕に関する企画・実施の調整のこと。具体的には、管理費・修繕積立金の徴収、滞納者の確認、各種経費の支払い、月次会計報告など。その他の事務としては、管理組合の理事会と総会の支援業務、重要書類の保管などがあります。
(2)管理員業務
管理員が行う日常の管理業務には、受付業務、点検業務、立会い業務、報告連絡業務があります。
【受付業務】居住者や来客への対応、共用部分の鍵の管理や貸し出し、備品管理など
【点検業務】建物や設備の目視点検、電球の点検・交換、無断駐車や無断駐輪のチェックなど
【立会業務】外注業者の作業時の立会い、ゴミ収集時の立会いなど
【報告連絡業務】管理組合の文書の配布・掲示、各種届け出や点検結果の報告、事故発生時の連絡や報告など
管理員の勤務形態は、決められた曜日・時間に通勤する「日勤型」、マンションに住み込む「常駐型」、1人で複数のマンションを担当する「巡回型」があります。小規模のマンションでは、巡回の管理員が清掃とゴミ出しだけ行うところも少なくありません。
(3)清掃業務
清掃は、大きく「日常清掃」と「定期清掃」に分けられます。日常清掃は、共用部全般の掃き・拭き作業、ゴミ出しといった作業を指し、定期清掃は、専門業者による床面の機械洗浄作業が主で、年間数回の頻度で実施します。
マンションの規模などによって、管理員が日常清掃も実施するケースと、専門の清掃スタッフが派遣されるケースがあります。なお、「特別清掃」として、共用部のガラスや照明器具等の清掃を行う場合も。
(4)建物・設備管理業務
建物の外観点検のほか、エレベーター、電気設備、給排水設備、消防用設備、機械式駐車場など各種設備の保守・点検を行います。なお、エレベーターや消防設備については、それぞれ法律で定期的な点検が義務付けられており、その資格を有する専門業者が点検を実施します。
管理業務を誰が行うのか、自主管理か業務委託か
マンションを管理する主体は、あくまでも管理組合のため、これらの業務を誰が行うかは組合で判断します。
自分たちで全ての業務を担う「自主管理」か管理会社への「業務委託」か、方法は大きく2つに分けられ、部分的に任せるならば「一部委託」、ほとんど一括して任せるのが「全部委託」になります。
実情としては、多忙な管理組合の役員に代わり、管理会社に業務委託をするのが一般的でしょう。
割合はかなり少ないですが、「自主管理」タイプの組合もあるため、それぞれの特徴やメリット・デメリットを以下に解説します。
自主管理のメリット・デメリット
コスト | 手間 | |||
自主管理 | ○ | 安い | × | かかる |
業務委託 | × | 高い | ○ | かからない |
メリット
自主管理のマンションは、マンション管理会社に頼むことなく自分たちでマンションの管理運営を行うので、“管理委託費用”が発生しません。
よって、多くの自主管理のマンションがマンション管理会社に委託しているマンションと比べて、毎月の管理費の支出を抑えられるメリットがあります。
また、自分たちでマンションの管理運営を行うため、居住者の方々の意識が高い傾向に。
結果として、自然と居住者間で話し合う機会が多くなり、お互いのことをよく知っている関係性が形成され、地震などの自然災害時のセーフティーネットになりうるのも自主管理方式をとるメリットの一つと言えるでしょう。
デメリット
管理業務を自分たちで行うため、管理組合の労力が増えることに。結果的に理事の担い手が減り、業務の引き継ぎも困難になります。自主管理体制の構築と継続性がポイントになるでしょう。
業務委託のメリット・デメリット
メリット
“フロント”と呼ばれる管理会社の担当者が全ての業務の窓口になるため、管理組合にとっては時間と労力の節約になります。また、設備の故障や事故などの緊急時には、管理会社が対応してくれるでしょう。新サービスや長期修繕計画の提案なども受けられるため、管理組合では不足しがちなマンション管理のノウハウがあるでしょう。
デメリット
すべての業務が管理会社経由のため業務委託費が割高になることが多いことが挙げられます。また、管理会社に“おまかせ”という状態になり、管理組合の当事者としての意識が希薄化することで、本来すべき管理会社の仕事に対するチェックがおろそかになり、結果的には、管理の質に影響することも。
理事会などの機会を使い、管理会社の業務内容を確認するのを忘れないようにしましょう。
一部委託という選択肢も
一部委託では、各種設備点検や清掃などの業務を管理会社を経由せずに専門業者に直接委託します。全部委託に比べると管理組合の取引先が複数になるため管理の手間がやや増えますが、コストを節減できる可能性があります。
マンション購入前に知っておきたいこと
マンション管理の基本的な考え方が分かったところで、マンションを購入する前に覚えておくとよいお金について解説します。
マンション管理の財源は管理費と修繕積立金
マンションを購入すると、毎月「管理費等」(駐車場などの専用使用料を含む)と「修繕積立金」が徴収されます。
この2つがマンションを維持管理していくための財源になります。管理費には、マンションの日常管理に使われる費用、管理会社への管理委託費や共用部の水道光熱費が含まれます。
一方、修繕積立金は、大規模修繕工事や設備の更新など共用部の計画修繕のために貯蓄しておくお金でのこと。
年月が経つと建物や設備が劣化し始め、外壁や屋上防水の補修、給水・排水管設備の交換、エレベーターの改修などが必要になります。これらの改修には多額の費用がかかるため、毎月計画的に積み立てる必要があります。
マンション選びには管理面のチェックが必須
新築マンションの場合は、月々の管理費や修繕積立金が低く抑えられている傾向にあるため、将来的に値上げの可能性があることを認識しておきましょう。一般的には戸数が多い大規模マンションほど、管理費や修繕積立金は低くなり、戸数が少ないマンション程、高くなる傾向にあります。
一方、中古マンションを購入する場合は、立地や間取り、築年数だけでなく、管理も重視すべき項目です。マンションの維持管理は物件により差が出やすく、将来の資産価値にも影響するからです。
では購入前にはどういうところをチェックしたら良いのでしょうか。
中古マンションを購入する際の管理に関するチェック項目
1.現地での管理状態をチェック
ゴミ置き場が綺麗に清掃されているか、植栽が荒れ放題になっていないかなど、管理員がいれば、直接話を聞いてみるのもおすすめです。
2.検討度合いが高い場合は、管理に関する資料を不動産会社経由で入手する
最低でも、管理規約と使用細則、長期修繕計画書は仲介業者を通じて必ず入手し、その有無や内容を確認しましょう。管理組合が適正に運営されているかどうかは、過去3年分程度の総会議案書とその議事録、総会の議事録から分かるはず。マンションが抱えている課題や区分所有者の意識度合いもある程度把握できますが、こちらは重要な情報のため、よほど検討度合いが高くないともらえない場合もあるでしょう。
3.修繕積立金の増額リスクを確認する
マンションの修繕積立金に関するガイドライン(※)を参考に現時点での修繕積立金の水準はどうか、チェックしておきましょう。マンション購入直後に、値上げが控えていないかどうかも確認するようにしましょう。
※【出展】国土交通省:マンション管理について
コーポラティブハウスの管理形態は、「物件による」
コーポラティブハウスも完成後は通常の分譲マンションと同じ区分所有になるため、マンション管理における考え方も同様です。
しかし、共用設備が給排水設備のみで戸数が少ないコーポラティブハウスでは、管理コストを抑えるため。自主管理形態や一部委託をとっているケースも。
コプラスが事業企画するコーポラティブハウスでは、日々の管理のしやすさや将来の売却時に懸念材料とならないよう、企画段階で全部委託の方向で管理会社を選定しています。
しかしながら、企画会社や企画自体により方針が異なるため、参加を検討する際に管理形態も確認しておく方が良いでしょう。
執筆者:株式会社コプラス コーポラティブ事業部 大澤(宅地建物取引士)
渋谷区にあるまちづくりが得意な不動産コンサルティング会社でコーポラティブハウスの企画運営を担当しています。同時に家づくりに関する知識をお届けするデジタルコラム・「CO+コラム」も運営中。
◆コーポラティブハウス特設サイト https://cooperativehouse.jp/
◆お宅訪問インタビュー動画: https://cooperativehouse.jp/casestudy/
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この記事を書いた人
株式会社コプラス